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「さうか。うちの方では山車だしを引いて出るさうだ。それから、みんな紋付に羽織袴といふことだの」
「別に何日からでもないんです。今日からでも――」
と、案外冷静に云つた。
房一はまだ考へ深さうにしていた。
「ねえ!」
「いや、どうぞ構はんで下さい」
徳次は急に目くばせをした。
房一はその「ごとき」といふ箇所にわざと力を入れながら、つゞいて、今夜の席に招かれたことを謝し、甚だ不本意ではあるが止むを得ぬ所用があるので途中から退席させてもらひたい、と述べた。
今度は正文の方で答へなかつた。そして急に苦がい顔になつて、ぢろりと薬戸棚を見まはしただけで母屋おもやの方へ帰つて行つた。
「本当も本当でないもありやしませんよ。財産譲渡無効、その返還を請求したのだよ」
彼は男の顔を蔽つている手拭をとりのけながら云つた。
練吉は眠気から覚めたやうに、
「便所に化物が出たそうです。」